親御さんのITサポート疲れ...地域に任せるメリットと判断基準、相談先
高齢のご両親のIT機器やスマートフォンの操作について、ご家族がサポートされているケースは多いことと思います。日々の小さな疑問から、設定の変更、新しいサービスの使い方まで、サポートの範囲は広がる一方かもしれません。
親御さんにとっては頼れる家族がいることは心強いものですが、サポートするご家族にとっては、ご自身の時間や労力がかかる負担となることも少なくありません。教えることの難しさを感じたり、同じことを何度も説明する大変さに直面したりすることもあるでしょう。
全てをご家族だけで抱え込む必要はありません。地域には、高齢者のIT利用を支援するための様々なサービスや窓口が存在します。こうした地域支援を上手に活用することで、ご家族の負担を軽減しつつ、親御さんが安心してデジタルライフを送れるようになる可能性があります。
なぜ家族のITサポートは大変に感じやすいのか
親御さんのITサポートがご家族にとって負担になりがちなのは、いくつかの要因があります。
- 学習スピードや理解度の違い: 高齢になると、新しい概念を理解したり、複雑な操作を覚えたりするのに時間がかかる場合があります。一度説明しただけでは定着しにくく、繰り返し教える必要が生じることがあります。
- 質問の幅広さ: 特定のアプリの使い方だけでなく、「インターネットって何?」「充電はどうするの?」といった根本的な疑問から、「この画面に出たメッセージは何?」といった突発的なトラブルまで、質問の内容は多岐にわたります。
- 機器やサービスの進化: スマートフォンやアプリは頻繁にアップデートされ、新しいサービスが次々と登場します。一度教えた内容が変わってしまったり、ご家族自身も知らない新しい使い方を尋ねられたりすることがあります。
- 感情的な側面: 親子という関係性ゆえに、教える側も教わる側も感情的になりやすく、うまくいかない時にイライラしたり、自信をなくしたりすることがあります。
こうした状況が続くと、ご家族は「また聞かれる」「どう説明すれば分かってもらえるのか」と精神的な負担を感じやすくなります。
地域支援に「任せる」という選択肢とそのメリット
ここで考えたいのが、ITサポートの一部、あるいは全てを地域支援に「任せる」という選択肢です。これは突き放すということではなく、外部の専門的なサービスを賢く活用するということです。
地域支援に任せることには、以下のようなメリットが考えられます。
- ご家族の負担軽減: ご自身が対応する時間や精神的なエネルギーを減らすことができます。これにより、ご自身の生活に余裕が生まれ、親御さんとの関係性も良好に保ちやすくなります。
- 専門家による適切な指導: 地域には、高齢者への指導経験が豊富なスタッフがいる場所が多くあります。高齢者のペースや理解度に合わせた教え方、つまずきやすいポイントへの配慮など、専門的なアプローチでサポートを受けられます。
- 最新の情報提供: 地域の支援団体や教室は、最新のIT事情や地域のデジタルサービスに関する情報を持っていることがあります。
- 親御さんの社会参加・交流機会: スマホ教室などに参加することで、同じような悩みを持つ仲間と出会い、交流する機会が生まれます。学習意欲の向上や、引きこもり防止にもつながる可能性があります。
- 客観的な視点: ご家族以外からの指導は、親御さんにとっても新鮮で、素直に受け入れやすい場合があります。
地域支援に「任せる」かどうかの判断基準
全てを地域支援に任せる必要はありませんし、ご家族がサポートしたい内容もあるでしょう。地域支援に任せるかどうか、あるいはどの部分を任せるかを判断するための基準をいくつかご紹介します。
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ご家族の状況:
- 親御さんのサポートに、継続的に時間を割く余裕がありますか。
- ITの知識や教えることに自信がありますか。
- サポートすること自体が、ご自身のストレスになっていませんか。 もし、時間的、精神的な余裕がないと感じる場合は、地域支援の活用を真剣に検討する時期かもしれません。
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親御さんの状況:
- 親御さんは、新しいことを学ぶことに抵抗が少ないタイプですか。
- 集団で学ぶこと(教室)や、見知らぬ人と話すこと(相談窓口)に抵抗がありますか。
- ご自宅から地域の支援場所までの移動手段はありますか。 親御さんの性格や希望を尊重することが大切です。まずは体験教室などを試してみるのも良いでしょう。
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困っている内容の性質:
- 特定の操作方法(例: LINEで写真を送る方法)など、一度覚えてしまえば解決する内容ですか。
- セキュリティ対策やアカウント管理など、継続的に知識のアップデートが必要な内容ですか。
- 機器の故障や複雑な設定など、専門知識や技術が必要なトラブルですか。 一度きりの簡単な質問であればご家族でも対応しやすいかもしれませんが、継続的な学習支援や専門的なトラブル対応は、地域支援の方が適している場合があります。
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地域にどのような支援があるか: お住まいの地域に、どのような種類のIT支援(教室、個別相談、訪問サポートなど)があり、費用はどのくらいかかるかなどを事前に調べておくことも判断材料になります。
これらの要素を総合的に考慮し、ご家族と親御さん双方にとって最も無理のない、より良い方法を選択することが重要です。
どのような地域支援があるか、どう選ぶか
地域で利用できるIT支援には様々な種類があります。
- 自治体や社会福祉協議会の教室・相談会: 費用が比較的安価、または無料の場合が多く、基礎的な内容や地域に特化した情報提供が行われることがあります。
- NPOや市民活動団体: 高齢者支援に特化した団体が多く、丁寧な個別相談や訪問サポートを提供していることがあります。特定の課題(例: 詐欺対策)に詳しい場合もあります。
- 携帯キャリアのショップ: スマートフォンの基本的な操作方法やサービス利用に関するサポートを受けられます。契約内容の相談なども可能です。
- 民間のITサポート業者: 個別対応や訪問サポートなど、柔軟な対応が可能ですが、費用は比較的高めになる傾向があります。
- 地域の電気店など: 一部の店舗では、簡単な設定や使い方に関する相談に乗ってくれる場合があります。
これらの支援を選ぶ際は、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 費用: 有料か無料か、料金体系は明確か。
- 場所とアクセス: 親御さんが無理なく通える場所にあるか。訪問サポートの可否。
- サポート内容: どのような内容に対応しているか(基本的な操作、特定のアプリ、トラブル対応、設定代行など)。親御さんが困っている内容に合っているか。
- 形式: 集団(教室)か個別か。親御さんはどちらが学びやすいか。
- 雰囲気: スタッフの対応は丁寧か、高齢者に慣れているか。可能であれば事前に問い合わせたり、見学したりすると良いでしょう。
まずは、お住まいの地域の役所の窓口や地域包括支援センターなどに問い合わせてみるのがおすすめです。「高齢者向けのIT支援やスマホ教室について知りたい」と相談すれば、関連する情報を提供してもらえることがあります。
まとめ
ご両親のITサポートは、ご家族にとって大変な労力を伴うことがあります。しかし、全てを自分で抱え込む必要はありません。地域には、高齢者のデジタルライフを支えるための多様なサービスが存在します。
ご家族の負担軽減、親御さんの適切な学習機会、社会参加促進といったメリットを考慮しつつ、ご家族と親御さんの状況、困りごとの内容に合った地域支援を検討してみましょう。まずは地域の相談窓口に一歩踏み出してみることから始めてみてはいかがでしょうか。ご家族と親御さん、双方にとって心地よいデジタルとの付き合い方を見つけるための一助となれば幸いです。