親御さんのスマホ・タブレット、身体に合わせて「使いやすく」設定変更 ~アクセシビリティ機能と地域で聞ける場所~
親御さんのIT機器、もっと「使いやすく」するための設定とは
日頃、親御さんのスマートフォンやタブレットの操作について質問を受けたり、設定を手伝ったりする機会は多いかもしれません。親御さんが「画面が見にくい」「ボタンが押しにくい」「音が聞き取りにくい」といった身体的な不便さを感じている様子を見て、何とかしてあげたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
IT機器は、購入したままの設定では、すべての人にとって最適な状態とは限りません。特に、加齢に伴う視力や聴力の変化、手指の細かな動きの難しさなどによって、操作が難しく感じられることがあります。しかし、実は多くのIT機器には、そうした「使いにくさ」を解消するための様々な機能が備わっています。これらの機能は「アクセシビリティ機能」と呼ばれ、文字を大きくしたり、音を聞き取りやすくしたり、操作を補助したりすることで、より多くの人がIT機器を利用できるよう設計されています。
この記事では、親御さんがお使いのスマホやタブレットを、その方の身体的な特性に合わせて「使いやすく」するための代表的な設定や工夫についてご紹介します。そして、ご自身での設定が難しい場合や、もっと詳しく知りたい時に頼りになる地域の相談窓口についてもご案内します。
高齢者の方がIT機器を使う上での「使いにくさ」とその背景
高齢者の方がスマートフォンやタブレットを使う上で、よく耳にする「使いにくい」という声には、いくつかの身体的な変化が関係しています。
- 視覚に関する変化:
- 小さな文字が見えにくい、ぼやけて見える。
- 画面の色合いやコントラストが分かりにくい。
- 画面の明るさが眩しい、あるいは暗すぎる。
- 聴覚に関する変化:
- 通知音や着信音が聞こえにくい。
- 動画や音声の音量が小さく感じる。
- 特定の周波数の音が聞き取りにくい。
- 操作に関する変化:
- 手指の震えなどで、意図した場所をタップできない。
- 画面をスワイプしたり、長押ししたりするのが難しい。
- タッチ操作の反応が早すぎると感じる。
- キーボードでの文字入力が難しい。
これらの変化は自然なことですが、IT機器の標準設定が、若い世代や健常な方々の利用を想定している場合、そのままでは快適な使用が難しくなることがあります。
「使いやすくする」ための代表的な設定(アクセシビリティ機能)
お手持ちのスマホやタブレットには、これらの「使いにくさ」を軽減するための様々なアクセシビリティ機能が搭載されています。主に「設定」アプリの中からこれらの項目を見つけることができます。OSの種類(iPhone/iPadのiOSや、Androidなど)によって項目の名称や場所は異なりますが、基本的な考え方は共通しています。
代表的な機能の例をいくつかご紹介します。
- 画面の表示を見やすくする設定
- 文字サイズの変更: 画面に表示される文字を大きくすることで、文章やアプリのメニューが読みやすくなります。
- 表示サイズの変更: 文字だけでなく、画面全体の要素(アイコンやボタンなど)のサイズを大きく調整できます。
- コントラストや色の調整: 文字と背景のコントラストを高めたり、特定の色を強調したりすることで、画面の視認性を向上させます。ダークモードなども目に優しい設定として有効な場合があります。
- 音を聞き取りやすくする設定
- 音量調整: 全体の音量だけでなく、着信音、通知音、メディア音など、個別に音量を調整できます。
- モノラル音声: 左右のイヤホンやスピーカーから同じ音を出す設定です。片方の耳が聞き取りにくい場合に役立つことがあります。
- 音のバランス調整: 左右の音のバランスを調整できます。
- 操作を補助する設定
- タップ操作の補助: 画面をタッチする際の反応時間や、誤って連続してタップしてしまうのを防ぐ設定などがあります。
- AssistiveTouch(iOS)やユーザー補助メニュー(Android): 画面上に操作ボタンを表示させ、ホームボタンを押す、画面をスクロールするなど、特定の操作をボタン一つで行えるようにする機能です。物理ボタンの操作が難しい場合に便利です。
- 音声入力・音声操作: 話しかけることで文字を入力したり、機器を操作したりできます。キーボード入力が難しい場合に有効です。
- その他の便利な機能
- 画面の読み上げ: 画面に表示されているテキストを音声で読み上げる機能です。文章を読むのが大変な場合に内容を把握するのに役立ちます。
これらの機能は、「設定」アプリの中にある「アクセシビリティ」(あるいは「ユーザー補助」などの名称)といった項目にまとめられていることが多いです。
親御さんと一緒に設定を試す際のヒント
これらの設定を親御さんの機器に施す際は、いくつかの点に留意するとスムーズに進むでしょう。
- まずは親御さんの声を聞く: どこが「使いにくい」と感じているのか、具体的に何に困っているのかを丁寧に聞き取ります。
- 必要な設定から試す: 一度にたくさんの設定を変えるのではなく、最も困っていること(例:文字が見えない)に関わる設定(文字サイズ変更)から試してみます。
- 少しずつ調整する: 文字サイズなども、段階的に大きくしてみて、一番見やすいと感じるサイズを探します。
- 実際に使ってもらう: 設定を変えた後、普段使っているアプリ(LINEやウェブサイトなど)を開いてもらい、使用感を確かめてもらいます。
- 元に戻せることを伝える: 設定を変えてもいつでも元に戻せることを伝えれば、安心して試してもらえるかもしれません。
- 根気強く、焦らせない: 新しい設定に慣れるには時間がかかる場合があります。急かさず、繰り返し質問されても丁寧に説明することを心がけましょう。
家族の方がこれらの設定方法を調べて、一緒に試してあげることは、親御さんにとって非常に心強いサポートになります。
設定が難しい場合や、もっと詳しく知りたい時の地域での相談窓口
ご自身で設定方法を調べるのが大変、あるいは一緒に試してもどうも上手くいかない、といった場合もあるかと思います。また、親御さんご自身が「自分で操作方法を学びたい」と感じることもあるでしょう。そのような時には、地域にある様々な支援サービスを頼ることができます。
- 地域のIT支援サービス・スマホ教室:
- 自治体や社会福祉協議会、NPOなどが、高齢者向けのIT講習会やスマホ教室を開催していることがあります。ここでは、基本的な操作方法だけでなく、個別の困りごとについても相談できる場合があります。
- 文字サイズ変更や音声入力といったアクセシビリティ機能について、専門家が丁寧に教えてくれる講座もあるかもしれません。
- 家族の方が一緒に参加できる教室や、個別相談を受け付けている場所もあります。
- 携帯電話会社のショップ:
- ご契約中の携帯電話会社のショップでも、基本的な設定サポートを受けられる場合があります。ただし、複雑な設定や他社サービスの利用に関する相談は対象外であったり、有償であったりすることもあるため、事前に確認することをおすすめします。
- 地域包括支援センターなど:
- 高齢者に関する様々な相談を受け付けている地域包括支援センターなどで、IT機器の利用に関する相談先について情報提供を受けられる場合があります。
これらの地域の支援を活用することで、親御さんが専門家から直接アドバイスを受けられたり、同じような悩みを持つ人たちと一緒に学ぶことができたりします。家族の方にとっても、ご自身の負担を軽減しつつ、親御さんが安心してITを利用できるようサポートするための良い機会となります。
地域のIT支援サービスや相談窓口を探すには、お住まいの市区町村のウェブサイトを見たり、役所の高齢者福祉担当窓口や社会福祉協議会に問い合わせてみたりすると良いでしょう。
まとめ
親御さんがIT機器を快適に使うためには、機器に備わっている「使いやすくする設定」(アクセシビリティ機能)を適切に活用することが非常に有効です。文字のサイズ調整、画面の色合い、操作の補助など、少しの設定変更で「見えない」「聞こえない」「押せない」といった課題が解決できる場合があります。
ぜひ、親御さんと一緒に設定画面を開き、どのような機能があるか見てみてください。そして、親御さんが特に不便に感じている点について、一つずつ試してみることをお勧めします。
もし、設定方法が分からなかったり、もっと専門的なアドバイスが欲しかったりする場合は、一人で抱え込まず、地域のIT支援サービスや相談窓口の利用を検討してみてください。専門家や経験者の助けを借りながら、親御さんのデジタルライフがより豊かで快適なものになるよう、一緒にサポートしていきましょう。家族の負担軽減のためにも、地域の力を上手に借りていただければ幸いです。