高齢者の新しい読書習慣「電子書籍」~始め方、メリット、地域で相談できる場所~
電子書籍という新しい読書スタイル
日頃から読書を楽しまれている親御さんにとって、本は身近な存在かと思います。重い本を持ち歩くのが大変になったり、文字が小さく感じられたりすることはありませんか。そんな時、電子書籍という選択肢が、親御さんの読書生活をより快適にする可能性があります。
しかし、電子書籍と聞くと、「難しそう」「どんな機器が必要なの」「どうやって買うの」といった不安を感じられるかもしれません。また、サポートするご家族様も、「どうやって教えれば良いのだろう」「どこに聞けば良いのか分からない」と悩まれることがあるでしょう。
この記事では、高齢の親御さんが電子書籍を始める際のメリットや、具体的な始め方、そして困った時に頼れる地域のITサポートや相談窓口についてご紹介します。
高齢者にとって電子書籍のメリットとは
電子書籍には、紙の本にはない様々なメリットがあります。特に高齢者の方にとって、次のような利点が考えられます。
- 文字サイズの調整ができる: 多くの電子書籍リーダーやアプリでは、文字の大きさを自由に拡大・縮小できます。これにより、視力に合わせて読みやすいサイズで読書を楽しめます。
- 持ち運びが楽: スマートフォンやタブレット、専用の電子書籍リーダー1台に、何冊もの本を入れて持ち運べます。旅行や外出時にも、たくさんの本の中から好きなものを選んで持っていくことができます。
- 本の置き場所に困らない: 電子書籍はデータなので、場所を取りません。たくさんの本を読んでも、自宅の本棚がいっぱいになる心配がありません。
- 購入・利用が手軽: インターネットに繋がっていれば、自宅にいながら好きな時に本を探して購入したり、地域の図書館が提供する電子書籍サービスを利用して借りたりすることができます。書店に行くのが難しい方にも便利です。
- 音声を読み上げる機能: 一部の電子書籍アプリや機器には、テキストを音声で読み上げる機能(TTS: Text-to-Speech)があります。目を使わずに「耳で読む」ことも可能です。
もちろん、紙の本ならではの良さもたくさんありますので、電子書籍は「紙の本に代わるもの」ではなく、「読書の選択肢を広げるもの」として考えていただくのが良いでしょう。
電子書籍を始めるために必要なものと基本的な流れ
電子書籍を始めるために必要なものは、主に以下の3つです。
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電子書籍を読むための機器:
- スマートフォン: 普段お使いのスマホにアプリを入れて利用できます。手軽に始められますが、画面が小さいと感じる方もいるかもしれません。
- タブレット: スマホより画面が大きいので、文字やイラストが見やすいです。自宅でゆっくり読むのに適しています。
- 専用電子書籍リーダー: 目に優しい表示(E Inkスクリーン)で、バッテリーも長持ちするものが多いです。読書専用なので、他の機能は限られます。
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インターネット環境:
- 自宅にWi-Fi環境があれば、通信料を気にせず利用できます。Wi-Fiがない場合でも、スマートフォンのモバイルデータ通信で利用できますが、大量のデータをダウンロードする場合は通信量にご注意ください。
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電子書籍サービスのアカウント:
- 電子書籍ストア: Amazon Kindle、楽天Kobo、honto、紀伊國屋書店Kinoppyなど、様々なサービスがあります。サービスごとに取り扱い書籍や価格が異なります。アカウント(多くは無料登録)を作成し、読みたい本を購入(または無料の本をダウンロード)して利用します。購入にはクレジットカードやプリペイドカードなどが必要になる場合があります。
- 公共図書館の電子書籍サービス: お住まいの地域によっては、図書館が電子書籍の貸し出しサービスを提供しています。図書館カードがあれば無料で利用できる場合が多く、購入の必要がないため始めやすい選択肢です。利用方法はお住まいの自治体の図書館にご確認ください。
基本的な流れ:
- 電子書籍を読む機器(スマホ、タブレットなど)を用意する。
- インターネットに接続できる環境を整える。
- 利用したい電子書籍サービス(ストアまたは図書館)を選び、アカウントを作成する。
- 機器にサービスの専用アプリをインストールする。(図書館の場合はウェブサイトからの利用も可能)
- アプリやウェブサイトで読みたい本を探し、購入または借りる手続きをする。
- ダウンロードした本を開いて読む。
つまずきやすいポイントと地域で頼れる場所
電子書籍を始めるにあたって、親御さんやつまずきやすいと感じるポイントがいくつかあります。
- アカウント作成や支払いの手続き: メールアドレスの登録、パスワード設定、クレジットカード情報の入力などに不安を感じることがあります。
- アプリのインストールや操作: アプリをどこから入れるのか、入れた後の操作方法が分からないといったこともあります。
- 本の探し方、購入・借り方: たくさんの本の中からどうやって探すのか、購入や借りるボタンがどこにあるのかなど、慣れるまで時間がかかることがあります。
- 不具合が起きた時: アプリが起動しない、本が開けないなど、予期せぬトラブルに対応できないことがあります。
これらのつまずきに対し、ご家族様がサポートすることももちろん可能ですが、全てを担うのは負担になることもあります。そんな時は、地域のIT支援サービスや相談窓口を積極的に活用してみましょう。
地域で電子書籍の相談ができる場所
- 地域の公共図書館: 電子書籍サービスを提供している図書館であれば、利用登録の方法や基本的な使い方について窓口で教えてもらえることがあります。電子書籍の体験会などを開催している図書館もあります。
- 地域のIT教室・講座: 高齢者向けのIT教室の中には、タブレットやスマートフォンの基本的な使い方を教えてくれるだけでなく、特定のアプリ(例えば電子書籍アプリ)の使い方について相談できる場合があります。
- 自治体や社会福祉協議会の相談窓口: 高齢者向けの生活相談窓口などで、ITに関する簡単な質問や、適切な相談先についての情報提供を行っていることがあります。
- NPOや市民ボランティア団体: 地域で高齢者向けのITサポート活動を行っている団体があります。マンツーマンでのサポートや、特定のテーマに関する講座を開催していることがあります。電子書籍の利用支援を行っている団体を探してみる価値があります。
こうした地域の支援窓口を探すには、お住まいの自治体の広報誌やウェブサイト、地域の社会福祉協議会の情報などを確認すると良いでしょう。
家族がサポートする上でのヒント
親御さんに電子書籍を勧める際、そしてサポートする際に意識したい点をいくつかご紹介します。
- 無理強いしない: 紙の本が好きという方もいらっしゃいます。電子書籍はあくまで選択肢の一つとして、興味を持たれた時にサポートする姿勢が大切です。
- メリットを具体的に伝える: 「文字が大きくできる」「何冊も持ち運べる」など、親御さんの読書習慣に合わせて具体的な利点を伝えると、興味を持ちやすくなります。
- ゆっくり、少しずつ: 一度に全てを教えようとせず、アカウント作成、アプリのインストール、1冊開いてみる、文字サイズを変えてみる、というように段階を踏んで進めましょう。
- 一緒に試してみる: まずはご家族様が使っている様子を見せたり、一緒に操作したりすると安心感が生まれます。
- 成功体験を積んでもらう: 小さなことでも「できた」という体験を重ねることで、自信を持って使い始められるようになります。
- 困った時は一緒に調べる、または地域支援を利用する: 分からないことがあっても、「大丈夫、一緒に調べよう」という姿勢を見せたり、「こういう時は地域に相談できる場所があるらしいよ」と促したりすることで、親御さんの不安を軽減できます。
まとめ
電子書籍は、文字サイズの変更や持ち運びの容易さなど、特に高齢者の方の読書をより快適にする可能性を秘めたツールです。始めるにあたっては、機器の準備やアカウント設定、アプリ操作など、いくつかのハードルがあるかもしれません。
しかし、これらのハードルを乗り越えるために、ご家族様によるサポートはもちろん、地域の公共図書館の電子書籍サービスや、高齢者向けのIT教室、NPO、自治体窓口など、様々な支援や相談窓口があります。
親御さんが新しい読書の世界に踏み出す第一歩を、これらの地域の力を借りながら、焦らず、楽しみながらサポートしていただければ幸いです。困った時は一人で抱え込まず、ぜひ地域のIT支援を活用してみてください。