親御さんのための自治体デジタル通知受信ガイド ~設定方法と地域で聞ける場所~
はじめに
近年、自治体からの様々な連絡や情報が、紙媒体だけでなくデジタルでも配信される機会が増えてきました。健康診断のお知らせ、税金に関する通知、地域の広報誌、あるいは災害時の緊急情報など、重要な情報がデジタル化されることで、より迅速かつ効率的に届けられるようになっています。
しかし、IT機器の操作に不慣れな高齢の親御さんにとって、こうしたデジタル通知を適切に受け取り、内容を確認することは、時に難しい課題となることがあります。家族としては、親御さんが重要な情報を見落とさないか、手続きに遅れが生じないかなど、心配事が尽きないのではないでしょうか。
この記事では、自治体からのデジタル通知にはどのようなものがあるのか、どのようにすれば親御さんがそれらを受け取れるようになるのか、そして家族としてどのようにサポートできるのかについて解説します。また、どうしても解決できない問題や、教えるのが難しい場合に頼れる地域の支援についてもご紹介します。
なぜ自治体の連絡はデジタル化が進んでいるのか
自治体が情報伝達のデジタル化を進める背景には、いくつかの理由があります。
- 迅速性の向上: 災害時の緊急情報や、制度変更に関するお知らせなど、速やかに住民に伝えるべき情報をタイムラグなく届けやすくなります。
- コスト削減: 印刷費や郵送費といった経費を削減することができます。
- 利便性の向上: 住民はスマートフォンやパソコンから、時間や場所を選ばずに情報にアクセスできるようになります。
- 情報の網羅性: 関連情報へのリンクを貼るなど、紙媒体だけでは伝えきれない情報を分かりやすく提供できます。
こうしたメリットから、多くの自治体でウェブサイトでの情報公開に加え、登録制のメール配信、LINE公式アカウント、専用のスマートフォンアプリなどを活用した情報発信が進められています。マイナンバーカードを活用したマイナポータルを通じた行政からの通知もその一つです。
親御さんがデジタル通知を受け取る主な方法
自治体からのデジタル通知を受け取る方法は、自治体や情報の内容によって様々です。代表的な方法をいくつかご紹介します。
- 自治体ウェブサイトでの確認: 広報誌の電子版や、各部署からのお知らせなどが掲載されます。最新情報を自分で探しに行く必要があります。
- 登録制メールサービス: 事前にメールアドレスを登録しておくと、防災情報や子育て情報、イベント情報などが定期的に、または緊急時に配信されます。
- LINEなどのSNS公式アカウント: 自治体によっては、LINEなどで公式アカウントを解説し、友だち登録した住民に情報を配信しています。
- 専用スマートフォンアプリ: 自治体が開発した、あるいは提携しているアプリを通じて、地域情報や手続きに関する通知が届くことがあります。マイナポータル連携機能を備えたアプリなどもあります。
- マイナポータル: マイナンバーカードを使ってログインすることで、行政機関等からのお知らせや通知を確認できます。確定申告や年金に関する通知などが届くことがあります。
これらの方法は一つだけでなく、組み合わせて利用されている場合がほとんどです。親御さんが必要な情報にアクセスできるよう、どの方法でどんな情報が配信されているのか、自治体のウェブサイトなどで確認してみることが第一歩となります。
親御さんがデジタル通知でつまずきやすいポイントと教え方のコツ
デジタル通知の利用にあたり、親御さんが特につまずきやすいのは、以下のような点です。
- 情報の場所が分からない: どのウェブサイトを見ればいいのか、どのアプリを開けばいいのかが分からなくなる。
- 登録や設定が難しい: メールアドレスの登録、アプリのインストール、アカウント作成、パスワード設定などが複雑に感じる。
- 通知を見落としてしまう: アプリのプッシュ通知やメール通知に気づかない、あるいは通知に気づいても開き方が分からない。
- 複数の方法があることによる混乱: 同じ自治体からの情報でも、内容によって確認方法が違う場合に戸惑う。
家族がサポートする際の教え方のコツとしては、以下の点が有効です。
- 目的を明確にする: 「このアプリを入れると、健診のお知らせがスマホに直接届くようになるよ」など、何のためにそれを使うのかを具体的に伝えます。
- 手順を「見える化」する: 操作手順を紙に書き出す、スマートフォンの画面を写真に撮ってメモと一緒に渡すなど、後で見返せるようにしておきます。
- 一度に多くのことを教えない: 一つのアプリの使い方ならアプリ、メールの確認方法ならメール、というように、焦らず一つずつマスターしていくことを目指します。
- 一緒に操作する: 家族が代わりに操作するのではなく、親御さん自身に指を動かしてもらい、隣で見守りながらサポートします。
- できたことを具体的に褒める: 「今、メールを開くのが上手にできたね」「アプリのボタンを押せたね」など、小さな成功を具体的に褒めることで、意欲を高めます。
- 困ったらいつでも聞ける安心感を与える: 「分からなくなったら、いつでも聞いてね」と伝え、質問しやすい雰囲気を作ることが大切です。
困った時に頼れる地域やオンラインのサポート
家族によるサポートも大切ですが、時には専門的な知識が必要だったり、根気強い繰り返し指導が必要だったりと、家族だけでは対応が難しい場面も出てくるかもしれません。そのような時は、一人で抱え込まずに地域の支援を活用することを検討しましょう。
- 自治体のデジタル相談窓口: 多くの自治体では、住民向けのIT相談窓口を設けています。スマートフォンの基本的な操作や、自治体サービスの利用方法について相談できます。予約が必要な場合もあります。
- 地域包括支援センターや社会福祉協議会: 高齢者の様々な相談に乗っているこれらの機関が、ITに関する相談を受け付けたり、適切な支援機関を紹介してくれたりすることがあります。
- 民間のITサポートサービス: 有料になりますが、自宅への訪問サポートや遠隔サポートを提供している事業者があります。特定のアプリの設定など、具体的な困りごとに対応してもらえます。
- NPOやボランティア団体: 地域によっては、高齢者向けのITサポートをボランティアで行っている団体があります。費用が安価であったり、無料で利用できたりする場合もあります。
- スマートフォン教室・IT教室: 自治体や民間、NPOなどが開催しています。デジタル通知の確認方法や、自治体アプリの使い方に特化した講座があるか確認してみましょう。
これらの支援機関を利用することで、親御さん自身がサポートを受けられるだけでなく、家族が教え方のヒントを得たり、抱えている負担を軽減したりすることにも繋がります。
結論
自治体からのデジタル通知は、今後ますます増えていくと予想されます。親御さんがこれらの情報から取り残されないようにするためには、家族の理解とサポートが欠かせません。
まずは、親御さんが普段利用している自治体でどのような情報がどのようにデジタル配信されているのかを確認し、親御さんの現在のITスキルや興味に合わせて、無理のない範囲で取り組みやすい方法から試してみることをお勧めします。
教える際には、親御さんのペースに合わせ、根気強く、小さな成功を積み重ねていく姿勢が重要です。そして、家族だけで解決しようとせず、必要に応じて自治体の窓口や地域のIT支援サービスなど、外部の力を借りることも視野に入れてみてください。地域のサポートを上手に活用しながら、親御さんが安心してデジタル情報に触れられる環境を一緒に作っていきましょう。