親御さんの脳を元気に! ITを活用した認知機能維持のヒントと地域で相談できる場所
はじめに:ITと「脳活」の関係について
親御さんのデジタルサポートをされているご家族の中には、親御さんの物忘れが増えた、新しいことを覚えるのが大変そう、といった変化を感じることがあるかもしれません。加齢による自然な変化ではありますが、ご両親がいつまでも活動的に、そしてイキイキと過ごしてほしいと願うのは、ご家族共通の思いでしょう。
近年、ITの活用が、高齢者の認知機能の維持や向上に役立つ可能性が注目されています。スマートフォンやタブレットを使った様々な活動が、脳に適度な刺激を与え、新しい学びや社会とのつながりを生み出すと考えられているからです。
しかし、「ITは難しそう」「うちの親には無理」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、ITがどのように高齢者の「脳活」(脳を活性化させる活動)に繋がるのか、具体的なIT活用のヒント、そしてご家族ができるサポートの工夫、さらに地域で利用できる相談先や支援についてご紹介します。
なぜITが高齢者の「脳活」に役立つのか
IT機器、特にスマートフォンやタブレットは、単なる便利な道具というだけでなく、脳を活性化させる多様な要素を持っています。
- 新しい情報や刺激: インターネットを通じて、ニュースを見たり、趣味に関する情報を調べたり、知らなかった世界に触れることができます。新しい情報を処理することは、脳にとって良い刺激になります。
- 多様な操作: 画面をタップする、フリックする(指を払うように動かす)、ピンチアウト(指で広げる)、キーボード入力など、IT機器の操作は指先を使います。指先を使うことは脳の広範囲を刺激すると言われています。また、アイコンを認識して操作を選択するなど、視覚的な情報処理や判断も伴います。
- 思考や問題解決: アプリの使い方を覚えたり、目的の情報にたどり着くために検索方法を工夫したりすることは、思考力や問題解決能力を使います。オンラインゲームや脳トレアプリはもちろん、日常的なIT利用そのものが脳のトレーニングになり得ます。
- 社会とのつながり: ビデオ通話で離れた家族や友人と顔を見ながら話したり、SNSで趣味仲間と交流したりすることは、社会的な孤立を防ぎ、精神的な健康を保つ上で重要です。社会とのつながりは、認知機能の維持にも良い影響があることが知られています。
- 学習機会の拡大: オンライン講座で新しい知識を学んだり、興味のある分野の動画を見たりと、自宅にいながらにして様々な学習機会を得られます。学び続けることは脳を若々しく保つことに繋がります。
これらの要素が複合的に作用することで、IT活用は高齢者の認知機能維持に貢献する可能性があると考えられています。
高齢者におすすめのIT活用「脳活」の具体例
では、具体的にどのようなIT活用が高齢者の脳活におすすめできるのでしょうか。いくつか例をご紹介します。
- 脳トレ・学習系アプリ: 計算やパズル、記憶ゲームなど、楽しみながら脳を鍛えることを目的としたアプリが多数あります。難易度を選べたり、日々の成果を確認できたりする機能があるものを選ぶと、継続のモチベーションになります。
- オンライン学習サービス・趣味講座: 自治体や民間のオンラインサービスで、教養講座や趣味の教室が提供されています。歴史や文学、語学、絵画、音楽など、親御さんの興味に合わせたものが見つかるかもしれません。
- ニュースアプリ・インターネット検索: 毎日のニュースを読んだり、気になったことを自分でインターネットで調べてみたりする習慣は、知的好奇心を刺激し、情報収集能力を養います。
- ビデオ通話・メッセージアプリ(LINEなど): 家族や友人とのコミュニケーションは脳活において非常に重要です。顔を見て話せるビデオ通話や、文字入力が苦手なら音声入力なども活用できるメッセージアプリは、人との繋がりを保つ上で役立ちます。
- ゲームアプリ: 簡単なパズルゲームやカードゲームなど、戦略を考えたり集中力を使ったりするゲームも脳に良い刺激を与えます。ただし、依存には注意が必要です。
- 地図アプリ・乗り換え案内: 行きたい場所までの道順を調べたり、公共交通機関の乗り換え方法を調べたりすることも、空間認識能力や計画性を養います。
大切なのは、「これをしなければならない」と義務的に考えるのではなく、親御さんが「楽しい」「知りたい」と感じることから自然に始めることです。
親御さんと一緒に始めるには?家族ができるサポートのヒント
親御さんがITを活用した脳活をスムーズに始めるためには、ご家族のサポートが不可欠です。以下の点に気をつけてみましょう。
- 無理強いせず、興味を引き出す: 「体に良いから」と一方的に勧めるのではなく、「こんな面白いことができるみたいだよ」「これを使えば〇〇さん(友人)と簡単に話せるよ」など、親御さんがメリットを感じやすいように声かけをします。親御さんが以前から興味を持っていたこと(旅行、歴史、手芸など)とITを結びつけて提案するのも有効です。
- 簡単な操作から少しずつ: いきなり多くの機能を教えるのではなく、例えば「アプリを開く」「画面をスクロールする」といった基本的な操作から始めます。一つの操作ができるようになったら、次のステップに進むというように、小さな成功体験を積み重ねられるように配慮します。
- 一緒に楽しむ、褒める: 親御さんがITを使っている時に、そばで見守り、できたら「すごいね!」「上手!」と具体的に褒めます。一緒にゲームをしてみたり、調べ物をするのを手伝ったりするのも良いでしょう。
- つまずいた時の具体的な教え方: 同じことを何度も聞かれても根気強く対応します。言葉だけでなく、実際に画面を指差したり、メモを見せたり、動画で手順を記録したりと、親御さんに合った方法で教えます。間違っても責めたり、「前にも教えたでしょ」といった言い方をしたりしないよう注意が必要です。
- 操作しやすい設定: 画面の文字を大きくしたり、アイコンを見やすく配置したりと、親御さんの視力や指の動きに合わせて端末の設定を変更します。スマートフォンの「アクセシビリティ」機能を活用することも有効です。
ご家族がサポートする上で、どうしても時間が取れなかったり、教えることに限界を感じたりすることもあるでしょう。一人で抱え込まず、外部の支援を頼ることも考えてみてください。
一人で悩まない!地域で受けられるIT「脳活」支援
親御さんのIT活用や脳活について、ご家族だけで全てを担う必要はありません。地域には様々な支援の機会があります。
- 地域のスマホ教室・IT教室: 高齢者向けのスマホ教室やIT教室では、基本的な操作方法から特定のアプリの使い方まで、専門家や慣れた方が丁寧に教えてくれます。脳トレアプリの使い方やオンライン講座への参加方法などをテーマにした講座もあるかもしれません。同じ目的を持った仲間と交流できる点もメリットです。自治体や地域のIT関連団体、携帯ショップなどで開催されています。
- 自治体やNPOによるITサポーター制度: 一部の自治体やNPO法人では、高齢者宅への訪問や地域の集会所などで、個別のITサポートを行うサービスを提供しています。親御さんのペースに合わせて、自宅で落ち着いて操作を教えてもらえる場合があります。
- 図書館や公民館のIT相談・PC開放: 地域の図書館や公民館で、インターネットを使えるパソコンが設置されていたり、職員やボランティアによる簡単なIT相談を受け付けていたりすることがあります。まずはこうした身近な場所で情報を集めるのも良いでしょう。
- 地域サロンや交流拠点: 高齢者が集まる地域サロンなどで、住民同士がIT機器の使い方を教え合ったり、一緒にオンラインのコンテンツを楽しんだりする活動が行われていることもあります。
- 相談窓口: どこに相談すれば良いか分からない場合は、お住まいの自治体の高齢福祉課や地域包括支援センターなどに問い合わせてみることをおすすめします。地域のIT支援に関する情報を持っている場合があります。また、消費者生活センターでは、IT利用に関するトラブルの相談も受け付けています。
これらの地域資源を上手く活用することで、ご家族の負担を軽減しつつ、親御さんが安心してITを使った脳活に取り組める環境を整えることができます。
まとめ:ITは「脳活」の頼もしい味方、地域支援も活用を
IT機器は、使い方次第で高齢者の認知機能維持や脳の活性化に繋がる頼もしいツールになり得ます。新しい刺激、多様な操作、思考、社会とのつながり、学習機会など、様々な面から脳に適度な負荷と喜びを与えてくれる可能性があるからです。
親御さんのIT活用をサポートする際は、無理強いせず、親御さんの興味やペースに合わせて、小さな成功を積み重ねられるように配慮することが大切です。そして、ご家族だけで抱え込まず、地域のスマホ教室やITサポーター、相談窓口といった外部の支援を積極的に活用することをお勧めします。
ITは親御さんの日々の生活に楽しみや彩りを加え、脳を元気に保つための一助となります。この記事が、ご家族にとって、親御さんのIT活用をサポートする一歩を踏み出すきっかけとなり、地域の支援を上手く利用するための参考となれば幸いです。